認知症の方の思い

③ 詩 あなたへ

投稿日:2022年2月23日 更新日:

あなたへ

おーい、誰かー。
暗い闇の中、
わたしはどこにいるのだろう? ここはどこ? いま何時なの?
そこで怖い眼をして わたしを見ているのは誰なの?

どうしてそんな大きな声で私をしかるの?
そんなに強く手を引かないで、
わたしの行く道をふさがないで、
こんなところに閉じ込めないで・・・。

怖いよ、助けて。
どこへ行けばいいの? 何をすればいいの?

わたしにはわからない。ここがどこで、あなたがだれなのかも・・・。

ああ、手が暖かくなってきた。
誰かがわたしの手をやさしくにぎり、ほほえんでいる。
わたしにゆっくりとやさしく語りかけてくる。

肩の力がとれ、暖かいひざしに包まれたように、
やわらかな気持ちになる。
まるで心が生き返るかのように。

あなたがそばにいると、わたしは楽になり安心できる。
わたしの行く道にただよりそっている あなた。
あなたの名前も、この場所も、何もわからなくなったけれど、
わたしを大事に思ってくれていることだけはわかります。

わたしには何も残っていないように見えるかもしれないけれど、
怒りや悲しみもあり、何よりも
あなたと喜びを感じ合いたいと思っています。

いつだって、心はいきているのだから。

出展 認知症ケア研究会 著
「いつだって心は生きている 大切なものをみつけよう」
発行元 中央法規
定価 1,260円(税込)
発行 2006年10月20日

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