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会報誌　平成２２年１２月号掲載

母のがん　肝臓から肺に、福岡までの通院を決意（18）

　「転移ですね。先月からマーカーが上昇気味だったのですが、肝臓ですね。手術か抗がん剤治療になります」私には転移の話だけでも十分にショックだったのですが、なによりうつの実母にそのまま伝えられたのをどうフォローしたらいいのか頭の中はパニックになっていました。「抗がん剤は、やらない」という実母に、私達家族は悩みました。その頃の実母はうつ以外の症状はなく、もちろん痛みもなく、このまま何もしないでがんが大きくなるのを待つだけなのは苦しいんじゃないかと思っていました。
　医師にも家族みんなで会いに行きましたが、家族の意見は基本的に受け付けてくれず、少ない情報の中から質問をしようとすると「私の患者は本人だけです、つまらないことを話す時間はない」と言われ、それまでも不信感のあった医師にセカンドオピニオンをお願いして、実姉の住む福岡の専門病院にかわることにしました。かわったことは正解で、医師はどんなことも笑わず怒らず聞いてくれ、藁をもすがる気持ちの私達にとってはあまりの違いに驚き、安心して実母を任せることができました。うつのことも診療内科の専門医ががんの治療時間の合間にカウンセリングを設定してくれ、検査入院の間も機会あるごとに病室に来てくれて、実母は安心していたようでした。
　でも、肝臓の検査の前夜のことでした。実姉が泣きながら電話をしてきました。「病院から、検査の結果肺にも転移していることがわかって、もう抗がん剤しか方法はないって、お母さんに何て言う、どうしよう」と言う電話でした。次の日担当医師や家族みんなで実母に「手術は難しくなったんよ、体力があるときだけ抗がん剤やってみない？きつくていやだったらやめることにしたらいいし、人によっては、副作用も少なくて効果があるらしいよ」と言い説得しました。実母は思いのほか落ち着いて聞いてくれ、抗がん剤治療を受け入れ、実姉のところから治療に通うことになりました。
　実父は、田舎でひとり暮らしをがんばっていましたが、２ヶ月ほどでギブアップし、田舎を引き払い実姉と同居することになりました。しかし小学生の息子のいる実姉が両親と同居することは思っていたより大変でした。今まで、舅、姑のことに追われて自分の両親は、いつまでも元気で私がたいへんなとき相談にのってくれる存在でした。実母の命の期限が切られようとしている今、すこしでも実母に会いたかったし、同居する実姉の負担も減らしたいと思いました。そのため小倉と福岡は距離がありましたが、実母の通院は私が、請け負うことにしました。　実母は２週間毎に病院に通い体調に応じて抗がん剤治療とうつの診療をしてもらいました。が、抗がん剤治療ができれば、倦怠感、発熱に襲われ、出来なければ実母は、落ち込んでしまうし、髪が抜け始めたときは何も話さなくなり、泣き不安を訴えましたが、どうしてやることもできませんでした。

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