０２

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　会報誌　平成年月号掲載
　第2話　ばば着替え中

　　私（著者）の寝る場所は、ばば（祖母）のベッド下の床です。夜中に「トイレ連れてって下さい
　」という要求にすぐに（？！）応えるためです。一時期は夜中に何度か起こされましたが、最近は尿
　を溜める感覚がしっかりしてきたのか、夜中に起こされずに７～８時間はもつようになりました。（
　理由はわかりません）。

もしかして夜中にお声がかかっているのに、気付いていないのかもしれません（苦笑）。祖母はベッドから自分から離れることはできません。立つこともできないため、着替えや食事はすべてベッド上で行っています。

　第１話でも書きましたが、祖母は着替えを30分でも1時間でもかかって一人でしています。家族が手伝うことはありません。

祖母は以前杖をついていたため、力をいれすぎて指の関節が曲がっています。また、何度も転倒し腕を骨折、現在は両肩脱臼しているため、肩より上に腕が上がりません。寝間着は明治生まれですので浴衣を愛用しています。帯もどうにか結びます。朝はだいたい４～5時くらいに洋服に着替えます。着やすいようにワンピースタイプです。着替えを忘れてずっと寝ていることもあるようですが、その時は母が「まだ寝間着なの？恥ずかしいでしょ？」と叱咤激励します。

手が思うように動かず、立つこともできない祖母の着替えを陰ながらみていると、様々な工夫をしています。いわゆる「とっくりセーター」も着るのですが、これはやはり顔のところでひっかかり、うまく顔が通らず苦しみますので、この時は手助けします。

　ある時、祖母のベッドからガタ、ゴトンという妙な音がしたので覗いてみました。ワンピースがうまく脱げないようでした。立てれば下にストンと落として脱げるのですが、立てないためうまく脱げません。そこで祖母がした行動は、両足をひょいと目の前にあるテーブル（食事用）に乗せようとしている音だったのです。（かなり行儀が悪いです）。

思わず唖然とする私をちらっと見ていましたが、気にすることなく作業を続けます。私は近寄って「立ったら脱げるよ」と抱きかかえました。ワンピースはどうにか脱ぐことができてその後も無言のまま、着替えが続きました（この時は「ありがとう」はなかった）。

このような祖母の動作を見ていると、普段あたりまえに身体が動くことを当たり前と思ってはいけないな、そして、人間はいつまでも『努力』を忘れてはならないなと、自分を戒めるのです。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　次回へ続く・・・・

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