０１

　第1話

　　12月のある金曜日。今日は母親が不在のため、かわりに孫である私が、お留守番兼
　祖母の見守り役
　（声がかかればトイレに連れて行く、食事の準備と片付け、お話し相手）だった。

　今朝は、いつも残すはずの朝食を全部食べてしまった（食パン2枚分とミルクティー）。「うふふ」と本人は満足そうにしてまた寝てしまった。そのため、昼食は控えようかと考え、よもぎもち（餡入り）を昼食代わりに渡してみた（これが案外大きかった。）

このよもぎもち、長いビニール袋に入っており、もちであるためにビニールにくっついていたので、なかなか出てこない。そこで、祖母はテーブルにあるはさみを取り、袋を横から切ろうとしてみた。うまく切れないため、今度は袋の口に少し切れ目を入れ、力いっぱいビニールを裂いた。私は後方からそっと様子をうかがっていた。

心の中では「そこまでして食べることに執着しなくても・・・」と思って見ていた。（実は、もちが大好物であることを母から聞き、納得した）その後、ようやくよもぎ餅が姿を現し口にほうばるが、これがすごーくのびるためうまく歯で切れない。やっと切れたと思ったら、もぐもぐと噛み、次々と歯で噛み切りながら口の中へ入れていった。ほんの2～3分。結局お茶も飲まず、喉に詰まらすことなく完食した。

　私は餅で喉を詰まらせないか気になったのと、うまく袋から出せるか気になるため、陰からその様子を見ていた。しかし、多少の時間はかかっても、手が不自由でも人の手を借りることなく、最後まで自分の力で開けて食べることができた。毎日の着替えも同じ。時には1時間ぐらいかかることもあるが、家族は手を余り出すことはない。

　祖母にとっては生活全体がリハビリになっている。

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