おじいちゃん

おじいちゃんありがとう（１）

おじいちゃんのやさしさ

おじいちゃんの孫

私の祖父は、今年７月に亡くなりました。レビー小体型認知症で、誤嚥性肺炎を繰り返すために、口からは食べられず、また、起立性低血圧がひどかったため、ここ２年間はほとんど寝たきり状態でした。

私は幼い頃、小学校から祖父母の家に帰り、夕食を一緒に食べてから、自宅に帰る生活をしていました。祖父は、元気な時も、病気になってからも、文句を一切言わない人でした。

５月の連休に、私と夫がお見舞いに行くと、注入のボトルを指差して「ちょっと、これ早く終わらせてぇな」と言いました。私は「勝手には出来ないから、ごめんね」と伝えました。そして、３人で色々おしゃべりして、私が帰り際に「じゃあ、おじいちゃん、またくるね」と言うと、「まぁええわ」と言いました。いつもなら「いつもおおきに。気をつけて帰りや」と言ってくれるのに・・・と思い「どうしたの？」と聞くと「一緒にご飯食べに行こうと思ったんやけど、まぁええわ」と答えたのです。

　祖父は、早く注入を終わらせて、私達を外食に連れて行ってあげようと、思ってくれていたようでした。祖父は、時々、自分が口から食べられないことを忘れます。私は返答に困り「私たちだけで行ったら、うらやましがられるし、またみんなでいこな！」と言いましたが、涙をこらえるのに必死でした。

祖父は、病室に台所もないし、起き上がれないのに「御飯食べてきたかぁ？雑炊作ったろうかぁ？」とよく気遣ってくれました。10年以上前に店を閉めたのに、まだ、現役のお米屋さん気分で「まだお米あるかぁ？」と聞いてくれました。時には「○○さんのところに配達に行かなあかんから、起こして！」と言ったり、幻覚を見て、「精米機が止まらない！どうにかして止めて！」と混乱する事もありました。「中学生くらいの男の子が来るんやけど、つじつまが合わないから、幻覚かもしれんなぁ」と、しっかりした一面もある祖父でした。

６月、唾液による誤嚥性肺炎なのか、熱が上がり、酸素マスクをつけました。私は、また元気になってくれるだろうと思っていました。でも眠る時間が多くなり、もしかするとお別れが近いのかも知れないと思うようになりました。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく

おじいちゃんありがとう（２）

おじいちゃんからのおくりもの

おじいちゃんの孫

　看護師さんは、祖父の意識がもうないとおっしゃいましたが、私が「おじいちゃん、聞こえる？おじいちゃんの孫で幸せやったで。ほんまに、ありがとう！」と言うと、祖父はうっすら目を開けてくれました。意識が“ない”ように見えるだけで、聞こえているんだ、と思いました。

　病院には色んな看護師さんがおられました。痰の吸引をする時、「○○さん、ごめんね。ちょっと痰取らせてね」と申し訳なさそうに、祖父の顔を見て話しかけ、吸引を終わると祖父の顔に優しく触れながら「ごめんね。しんどかったね。○○さん、頑張ってるね」と話しかけて下さる看護師さん。私達は救われました。何も言わずに、無表情に処置をされる看護師さんは、手際がよく、高い技術をお持ちでも、祖父を一人の人間としてみてもらえてないようで、悲しかったです。いい医療ってなんだろう、と考えさせられました。

　祖父の心拍が乱れ、時々息が止まるようになってきました。祖父は、家族全員の到着を待つかのようにがんばり、最後に私の夫が到着した30分後に、家族全員に見守られながら、旅立ちました。

私の夫は、亡くなった祖父の髭をそってくれました。私と妹たちは、祖父の体を温かいタオルで拭いてあげました。

　次の日、お通夜の前に、孫みんなで納棺師さんと一緒に、祖父に白い着物を着せてあげました。これは、あの世への旅支度なんだと思えて、祖父が凛々しく見えました。納棺師さんは、祖父がまだ生きているかのように祖父に接して下さいました。杖を納棺する時に「おじいちゃんは、どちらの手に杖を持っておられましたか？」と聞いて下さいました。私は、その納棺師さんの優しさ、心遣いがとても嬉しかったです。

　祖父から、そして祖父をケアして下さった多くの方から多くのことを学ばせて頂きました。人の命は有限であることを、頭ではわかっていても、普段はあまり意識しません。人はいつか死を迎えること、そして、何が人の幸せなのか、何を支えるべきなのかを学びました。毎日を丁寧に生きて生きたいと思います。

　おじいちゃん、いろんなことを教えてくれてありがとう！いつかは私もそっちの方に行くから、それまではお父さんと一緒に、こっちにいる私達のことを見守っていてね。