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会報誌　平成２３年5月号掲載

娘の成人式を喜ぶ病いの祖父母（２３）

　舅も姑も目が離せない状態の中、実父は入院中軽い脳梗塞を繰り返していました。担当医と本人との話し合いの結果、実父は、頚部の血管の手術をすることになりました。

　私は、自分の身体のこと、舅姑のことがあったため、福岡にいた娘が、実父の手術に実姉と付き添ってくれることになりました。娘は、逐一携帯メールで状況を知らせてくれ、無事手術は終ったとのメールで一安心しました。でも次の日実姉からの「お父さんが目を覚まさないんよ」との電話で、あわてて病院に行くことになりました。ICUの中でたくさんの機材につながれた実父は、わたしの呼びかけにもほとんど反応しませんでした。医師の話は、手術後大きな脳梗塞を起こしたためだろうと言うことで、危険な状態にあると聞かされました。

　心不全で入院の舅、グループホームで食事が取れなくなってきた姑、福岡のICUの実父、どれも明るい材料はありませんでした。一番近々に命の危機にあった実父は、それからかなり長い間ICUにいましたが、なんとか一命はとりとめました。歩くことも座位を保つことも難しくなり、もともと無口だったのに、ほとんどしゃべらなくなりました。それでも命をとりとめてくれたことは、手術の日病院に行かなかった不肖の娘にとってはわずかな救いでした。

　そんな中少し落ち着いてきた舅は、療養型病院に転院することになり、そこで病状が落ち着くのを待って胃ろうにすることになりました。三人の病状が不安定なままの２００９年の暮れでした。年が明けると娘は成人式を迎えます。忙しくて撮れなかった記念写真を撮ることにして、晴れ着を着せて姑に会いに行きました。晴れやかなことが大好きだった姑は、孫であることが認識できたどうかはわからないけれど、「きれいやねえ～かわいいねえ～」と繰り返し言ってとても喜んでくれました。娘と二人ピースサインで写真にも納まって、グループホームの皆さんにもことのほか喜んでいただきました。

　でも、その頃からそれまで落ち着いていた舅が、熱発を繰り返すようになりました。不安なまま年は明け、娘の成人式がやってきました。舅は予断を許さない状態で、苦しい酸素マスクの中、孫の晴れ姿を「二十歳か」と言って微笑んでくれました。姑は、呼びかけにもあまり答えてくれなくなっていました。病室に晴れ着は、アンバランスでしたが、節目の日に祖父母が無事成人式を見守ってくれたことは、とても有難く感謝しています。
　

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