02

会報誌　平成２１年４月号掲載

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
永い道のりに向かって（２）

「舅の介護に加えて姑の言動に異変が・・・」

　平穏な土曜日の朝は、姑の「お父さんがおかしいんよ。早く来て！」という電話で、一瞬にしてかき消えました。話の内容も十分に把握できないまま、私たちは実家に駆けつけました。座り込む舅とその横で舅を呼び続ける姑が目に飛び込んできました。なんとか病院に着いた頃には、舅は動けなくなって、すぐに脳梗塞の診断が出ました。元来大正生まれの無口で頑固な舅は、点滴が外れてリハビリが始まる頃から、思うようにならない身体に苛立って姑にあたり、リハビリを拒否し、「そんなもんはせん。どうせもうだめや」と言い続けました。それでもなんとかごまかしながらリハビリ室に連れて行く日々でした。リハビリ室に行ってしまえば、療法士の方々のとても上手な誘導で、ともすれば全てを拒否する舅の目先を変えたり、休憩を入れたりで、2ヶ月もすると伝い歩きが出来るようになっていました。

結局舅は、杖を使って歩けるようになると、家族の不安をよそに退院を急ぎ、帰ると言い続ける舅に姑は根負けして、家に連れて帰ることになりました。

　そんな入院生活の中で、毎日一緒に過ごした私は、姑のちょっとした異変に気付きました。入院後初めて入浴が許された時、姑に「お父さん、よかったねぇ。明日は楽しみやね」と翌日の入浴の話をしたのでした。ところが次の日姑は、何も持たずに病室にやって来ました。「おかあさん、お風呂の用意は？」姑の答えは、「え～。今日お風呂入れるん、知らんかった」「・・・」怒る暇もなく、家に戻って準備をする間中「そんなこと聞いてない、いつそんな話になったん」と、姑は自分だけ聞いてないことを怒っている様子でした。私はというと自分も怒りたいけど、あまりのことに混乱して、ただとにかくなんとかしないとまた舅が怒り出して収拾がつかなくなるということばかり考えていました。姑の言動が病気だとは考えず、感情的に判断し、舅のことで手一杯になっていました。もちろん私の気持ちは、それで治まるはずもなく、帰宅後、夫に話しても「年寄りだからなあ。そんなこともあるんじゃない」という答えに「あなたはその場にいないからわからんのよ」とさらに続く感じで、夫を責めたと思います。その後はありがちな言い争いに発展して、私は、親たちにぶつけられない不満を夫にぶつけていました。そのときが最悪だと思っていました。まだまだ始まったばかりだったのに・・・。

第３話へ