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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　会報誌　平成21年6月号掲載
第30話　気づきの力

　読者の皆さんは覚えていらっしゃいますか？　昨年の７月号にばばの足の爪がはがれていたという話。

１年近く経過し、また同じ事件が勃発しました（我が家にとっては大事件）。きっかけはわかりませんが、ある日、左足の中指の爪がほぼはがれかけているのを、母が発見しました。前回は左足の小指。今回は中指。前回は既にはがれて出血。今回はまだ出血までは至らず。前回も今回も、残念ながら本人から「痛い！」という発信はありませんでした。ばばを看ている母は気づくことが遅れてしまい、「どうしてもっと早く気づいてやれなかったのだろう」と悲しんで（ある意味悔しがって）いました。

　実はその前々からおかしな点があったのです。体を触っても左足の方ばかりが熱をもっていて、布団をかけてもいつの間にか脚をだして寝ていたのです。だからといってトイレまで行く間の歩行にあまり変化は感じませんでした。赤ちゃんと同じで、なかなか自分から「痛い、きつい」といったSＯＳを発信してくれません。何らかの形で発信しているのかもしれませんが、そばにいる人間がいかにそのサインに気づけるかにかかっています。

母がばばの足の爪の手当てをした後、その場所に触れ、「痛いの？」とたずねると「痛いかな？わからない」といった反応なのです。人によっても痛みの感じ方は違うと思いますが、爪がはがれてしまうという痛さは、中途半端な痛みではないです（経験した方はよく分かると思います）。爪のはがれた中指は内出血しているようで、指全体が赤くなっていました。

母は以前、かかりつけのお医者さんからいただいた、鎮痛剤と抗生剤を服用させたようです。勝手に家族が薬を飲ませることは危険ではありますが、10年以上ばばを介護している母の経験から、対処したようです。

　薬の成果もあり、現時点では痛みも軽減した模様です（「痛みはなくなったよ」という本人の発言から）。しかし介護している家族からしてみると、「なぜ痛みを訴えてくれなかったのか」という悲しい気持ちと、「それは無理だよね、早く気づいてやれなくてごめんね」という悔しい気持ちが入り混じります。

　このような家族（我が家の場合は母です）の気持ちも知っているのか知らないのか、ばばは今朝も早朝から（私は休みの日なのに・・・）、　ガタガタと物音を立てて着替えをしていました。着替えを手伝うと「これでいい？」と不安な様子で聞いてきました。「大丈夫だよ。きれいに着れているよ」と答えると「ありがとう」とはにかんだ笑みが返ってきました。

「今日は普通の会話ができた」と、この一言二言の会話が、早朝の眠い目を気持ちよくさまさせてくれました。今日は元気な姿のばばに、「周りの人間が気づいてあげること」の大切さと限界を、ふと考えたのでした。
　

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