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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　会報誌　平成19年6月号掲載
第6話　ばばの一日（下）

　前回は、昼食までの様子を書きましたが、よく考えると午後も同じように食べる時とトイレ以外は寝てばかりいて、ちょっとおもしろくないので、今回は父や母、妹とのやりとりも加えています。昼になるとちょうどばばのいる部屋へ太陽があたり、晴天の日はとても気持ちの良い場所です。

　案の定、昼はずっと寝ています。時々母は、息をしているのかと心配して様子を見に行くそうです。何も心配することなく、ずっと寝ているばばを見ているとうらやましいような、寂しいような・・・。

さて、普段は、昼寝を３時間程度（そんなに！！いやそれ以上らしい・・・・）したところで、ちょっと小腹がすくようです。寝ているだけの体に、きちんと３食も食べているのに、おやつもいるのかと驚きですが、時にはお饅頭やシュークリームなどの洋菓子もペロリ！と食べてしまいます。

　本日は、週に２回来ていただいている訪問介護員（ホームヘルパー）さんの日です。来ている時は、家族へは全く見せない笑顔でいろいろ話をしています。ホームヘルパーさんも上手に話を聞いてくださるので、家族は感謝しています（家族は話をろくに聞いてやらないものです）。

　東京で生活していたので、話題は関東大震災、戦争中のこと、飼っていた犬ののみを取るのが大変だった話・・・などが多いのではないでしょうか？（私も聞かされました。何回も）そして話は少しずつ脚色され、いつかは違った話になっている可能性も大だと思います。

　ホームヘルパーさんが帰ると、あの笑顔はどこえやら、さっさと寝てしまいます。たぶん多少はお愛想もあるのでしょうね。いやなおばばです（苦笑）。でも、家族の名前は覚えていませんが、ホームヘルパーさんの名前は覚えています。やはり優しく接して下さる方のことは覚えているのですね。

特に妹はかわいそうです。一番一生懸命声をかけるのに、呼ぶときも「下の方」（孫の中では下の方なので・・・・）とか、「ちょっと」とか、最近ちっとも名前で呼ばれないようです。

一度聞いてみたらと言ったら「分からないみたいで答えてくれなかった！！」とかなりショックを受けていました（私は笑ってしまいました）。

実は私も名前では呼ばれません。仕方がないのか、家族はショックですよね。そんな気持ちなど露知らず、夕食も運ばれた物の中で好きなものと味付けが気に入ったものだけを食べて、また就寝します。

夜は、電気がまぶしいと布団を頭までかぶっています。横に人が通ると、「消して」（私は明るいのよ！早く消して！）と申し付けます。

　本当、長生きするってすごいですね。つくづく驚きです。最近は体調が悪化することがないため、家族もこのまま、100歳を迎えるのではと恐ろしいことを想像しています（正直なところ・・・）。

　そういえばつい先日、妹がそばを通ると、突然、「駅弁を買っておじいちゃんに渡して欲しい」と言ったそうです。何度か聞いてようやく分かったことは、時計を見ると９時で（夜の９時です）、朝の９時と間違えて、会社に行ったおじいちゃん（亡くなった夫）に弁当を持たせるのを忘れたので、駅弁を買って届けて欲しいとのことだと想像がつきました。言われた妹は何のことだかさっぱり分からず、おろおろしていました（笑）。祖母の中にはまだまだ死んだ祖父は生き続けているのかもしれません。

　最後になりますが、父と祖母とはどういった会話がなされるのか興味はありませんか？

　父が話しかけてもチラッと横目で見る程度で、話は弾むことはないそうです。時々父もトイレに連れて行きますが、頭をさげて「ありがとうございます」と言ってくれることもあるようです。（祖母にとって、父の存在は如何？）

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